笑えない笑い話に、起業セミナーで熱烈な起業希望者に事業内容を尋ねたところ、「これから考えます」という回答が返ってきたというものがありますが、ただ単純に「起業」をすることが目的というのでは、熱が冷めた頃には夢の残骸と借金の山ということにもなりかねません。しかし起業に成功するとはどういうことか、と問えば、答えは人によって様々です。
サラリーマンが会社勤めでは収入が上がらず、一方同じ実力ながら独立を果たしたフリーランスが大幅に年収アップしたと聞けば、平静ではいられないかもしれません。もちろん独立すれば、会社の福利厚生や様々な保障とは縁を切るということで、単純な比較は禁物ですが、それでも会社勤めでは収入が頭打ちになるということはよくあります。そのためもっとお金を稼ごうと、起業を考えるのは必ずしも不自然ではありません。あるいは一攫千金を狙って夢は億万長者といった起業家の方が、イメージしやすいかもしれません。株式公開と同時に株価は急上昇して、瞬く間に大企業と肩を並べるというのも、特に近年のIT業界において実例には事欠きません。しかしこのように富を追求する場合には、投資や融資を募る方法や、それを返済したり還元したりといった方法を考える必要があります。大口の融資を受けたり出資を受けるということになれば、創業者とはいえ会社のコントロールが難しくなるものです。もちろんマネジメントやエンジニアなど社員にしたい優秀な人材は熾烈な取り合いになりますし、コアな技術もいつ漏洩するか、いつ真似をされるか分かったものではありません。
また一方では既存の会社のように、様々なしがらみに縛られて派閥争いに明け暮れるといった人間関係に嫌気が差したり、元々ワンマンで自分が率先してリスクを取る代わりにリターンも大きい社長業に魅力を感じる人もいます。独自の技術や製品を守りつつ、目先の利益に囚われずに無茶をしない日本的な経営は、アメリカのようにベンチャーであってもその企業価値を最大にしたら、他社に売り渡してしまってお互いに満足という感覚にはそぐわないといえるでしょう。このように会社を代々守り続けようというインセンティブの働く経営者の場合には、富よりも社内のコントロールを重視しているといえます。社内コントロールを実現するということは、株式会社であっても株式の大半を創業者あるいはその意のままになる親族等が保有し続けるということであり、取引先銀行との良好な関係を維持しつつ地道な努力で少しずつ成長し続ける優良企業が、日本には数多くあります。日本では世界に名の通った大企業であっても、株式を公開していない例が少なくないのです。
起業しようと考えたときには、地域の商工会議所の創業支援サービスを利用しても良いでしょう。まず商工会議所の窓口では、創業に関しての相談を受け付けています。原則無料で、様々な分野に渡りそれぞれの専門家が、創業に関する不明点や不安についての相談を行うことができます。さらに創業支援融資として、創業を予定している者に対し、事業計画書の審査などを行った上で、提携する金融機関に融資を斡旋するといったことも行っている場合があります。創業に関するセミナーやイベント等も利用価値のあるものです。少人数のゼミ式や基本知識を教える講義式など、同じ創業予定者との情報交換のためにも出席して損はないでしょう。
起業する際に多くの人が悩むのが資金調達に関することです。しかし、経営時と起業時の資金調達は異なります。経営実績のない起業時は、将来の予測に基づく事業計画書を審査されることになるため、その作り込みが重要になってくるのです。事業計画書を作成した後に資金計画を立て、どれくらいの自己資本金が必要なのか割り出してみましょう。起業時に融資を受けるためには、ある程度の自己資金割合が必要になります。目安としては、事業すべてを含めて必要な資金の内、2分の1から3分の1は持っておく必要があるでしょう。まずはコツコツと自己資金を貯めることが、金融機関からの信用を築くことになると言えそうです。
「技術・研究開発、サービス開発」に関わる制度の申請書を作成するには、大前提となるポイントがあります。それは日本語としてきちんと読める作文をするということ。もちろんよくポイントとされる「新規性、社会貢献性」を訴えることも重要です。しかしそれ以前に、読んでもらえる申請書でなければ意味がないのです。「文字を丁寧に書き(ワープロでの作成がベスト)、誤字脱字に注意する」「一貫性のある論理的な文章で書く」「専門用語を羅列せず、誰が読んでも理解できるように書く」「申請書の主旨を理解し、その回答となる文章を書く」など、人間が審査しているということを念頭に置いて、わかりやすい文章を書くよう心がけましょう。