日本の高度経済成長を支えたのは、田舎から東京へと大挙して繰り出してきた「金の卵」達と言われていますが、やがてバブル景気も崩壊し、残ったのは「1億総サラリーマン化」と呼ばれるように大量生産された会社人間というわけです。しかしその会社が終身雇用を見直し始め、代わりに成果主義を導入し始めたことによって、サラリーマンもぬるま湯に浸かっていられなくなっています。
これまでであれば会社内部での出世競争に明け暮れて、外で実力が通用するかどうかなどを考える必要はありませんでした。しかし最近もリーマンショックによって引き起こされた不況から抜け切れていない経済情勢から、いつ会社が潰れるとも知れず、いつクビになるとも左遷されるとも知れない状況で、むしろ積極的に起業を目指す人が増えています。起業熱に浮かされて、ITバブルのように、周囲に踊らされた挙句にあっけなく潰える夢も後を絶ちませんが、これは起業のハードルが下がった証拠といえるのかもしれません。もちろん起業するには、市場で通用するだけの実力が必要であるのは言うまでもありません。巷にあふれるサクセスストーリーを鵜呑みにするのは無謀である一方で、真に実力があれば個人事業主であっても、それを支援する助成金制度などが用意されています。
さて現在起業のために会社を設立しようと考えるのであれば、株式会社であっても資本金を1000万円準備する必要はありません。また発起人という設立当初の株主となるべき出資者を7名取り揃える必要もありませんし、役員を3名揃える必要もなくなっています。こうして今や「1円会社」や「1人会社」が堂々と誕生しているわけですが、これは株式会社やその他の会社組織を利用して、それぞれの事業用途に合わせて柔軟に機関設計することが出来るようにすることで、活発な経済活動を促そうという政策的な配慮によるものです。
更にIT技術の進歩と普及によって、ネットワーク環境が整ってきたことにより、どこでもいつでも仕事が可能な職種が増えてきたという背景も、起業を促しているようです。もちろんそのような流れを行政や民間もキャッチして、若者やシニアの挑戦や、新たな産業活性化のために、積極的支援に乗り出しています。またこれまでのような見た目に分かりやすい大量生産大量消費の時代から世相は移って、インターネット上の仮想空間における巨大市場を、実体経済が無視出来ない状況も生まれています。人と人とが世界中で瞬時につながる一方で、スローライフやスローフードといった考え方が広く共感を集めているというように、要求や期待が多様化していながらもそれが一つの潮流としてネット空間において一大勢力を形成することもあり、新たなビジネスチャンスが広がっているのです。
起業しようと考えたときには、地域の商工会議所の創業支援サービスを利用しても良いでしょう。まず商工会議所の窓口では、創業に関しての相談を受け付けています。原則無料で、様々な分野に渡りそれぞれの専門家が、創業に関する不明点や不安についての相談を行うことができます。さらに創業支援融資として、創業を予定している者に対し、事業計画書の審査などを行った上で、提携する金融機関に融資を斡旋するといったことも行っている場合があります。創業に関するセミナーやイベント等も利用価値のあるものです。少人数のゼミ式や基本知識を教える講義式など、同じ創業予定者との情報交換のためにも出席して損はないでしょう。
起業する際に多くの人が悩むのが資金調達に関することです。しかし、経営時と起業時の資金調達は異なります。経営実績のない起業時は、将来の予測に基づく事業計画書を審査されることになるため、その作り込みが重要になってくるのです。事業計画書を作成した後に資金計画を立て、どれくらいの自己資本金が必要なのか割り出してみましょう。起業時に融資を受けるためには、ある程度の自己資金割合が必要になります。目安としては、事業すべてを含めて必要な資金の内、2分の1から3分の1は持っておく必要があるでしょう。まずはコツコツと自己資金を貯めることが、金融機関からの信用を築くことになると言えそうです。
「技術・研究開発、サービス開発」に関わる制度の申請書を作成するには、大前提となるポイントがあります。それは日本語としてきちんと読める作文をするということ。もちろんよくポイントとされる「新規性、社会貢献性」を訴えることも重要です。しかしそれ以前に、読んでもらえる申請書でなければ意味がないのです。「文字を丁寧に書き(ワープロでの作成がベスト)、誤字脱字に注意する」「一貫性のある論理的な文章で書く」「専門用語を羅列せず、誰が読んでも理解できるように書く」「申請書の主旨を理解し、その回答となる文章を書く」など、人間が審査しているということを念頭に置いて、わかりやすい文章を書くよう心がけましょう。