近年は年功序列の夢も消え、会社がいつ潰れるか、また自分がいつクビになるかと、将来の不安に怯えながら仕事を続けるサラリーマンが少なくありません。その一方で必然的というよりはむしろ自ら積極的に望んで、会社あるいは個人事業主として起業しようと目論む人も増えています。
さて一般的に起業といえば、「会社を興す」という言葉でも端的に表されるように、とにもかくにも「会社」という組織を立ち上げて事業展開するようにも想像されます。もちろん飲食店や美容院のように、オーナーが個人事業主として細々と事業を始めることも、巷ではよくあります。どちらであっても、開業届を税務署に届ける上ではなんら違いはないのですが、その後の事業展開を考えると、起業当初から事業体の形態を考えておいた方が良い場合もあるのです。例えばITバブルの記憶も新しいでしょうが、すぐにもファンドなどの投資を募って、あるいは「篤志家」の出資を受けて、一気に事業展開を広げようと考えているような場合です。もちろんそれには投資家を納得させられるだけの良質な材料を、起業当初から保有しているという信頼があった上でのことでしょうが、その他にも外形上信頼を得るために、「会社」という個人から独立した組織体であることを求められるのです。もちろん個人事業主であっても、事業資金を助けるために、公的な助成金制度があります。
現在では、旧来の「有限会社」を新たに設立することが出来なくなっています。そして株式会社は資本金が1円であっても設立出来るようになり、また取締役が1人だけということも可能になりました。その役員の任期も、すべての株式について譲渡制限を定める多くの中小企業にとって、定款の定めにより10年まで延長することが認められています。また会社法によって新たに認められるようになった、LLC(合同会社)も注目されています。このLLCは、株式会社の株主と同じく有限責任に限定される社員から構成されており、1名からでも設立できますし、取締役や監査役のような役員は不要です。設立に際しても、手続きが株式会社よりも簡便で済みます。このような「会社」組織を名乗ることで、投資家や銀行以外であっても、一応の対外的な信用を得ることが出来るのです。というのもクライアントとなる企業の中には、個人事業主とは仕事をしないという方針を貫いている場合も少なくないのです。ITの分野では、業界自体が比較的新しいのですが、取引先には大手企業も含まれます。そのため地味に伝統的な信用を獲得する方法を選ぶ必要もあるのです。
起業しようと考えたときには、地域の商工会議所の創業支援サービスを利用しても良いでしょう。まず商工会議所の窓口では、創業に関しての相談を受け付けています。原則無料で、様々な分野に渡りそれぞれの専門家が、創業に関する不明点や不安についての相談を行うことができます。さらに創業支援融資として、創業を予定している者に対し、事業計画書の審査などを行った上で、提携する金融機関に融資を斡旋するといったことも行っている場合があります。創業に関するセミナーやイベント等も利用価値のあるものです。少人数のゼミ式や基本知識を教える講義式など、同じ創業予定者との情報交換のためにも出席して損はないでしょう。
起業する際に多くの人が悩むのが資金調達に関することです。しかし、経営時と起業時の資金調達は異なります。経営実績のない起業時は、将来の予測に基づく事業計画書を審査されることになるため、その作り込みが重要になってくるのです。事業計画書を作成した後に資金計画を立て、どれくらいの自己資本金が必要なのか割り出してみましょう。起業時に融資を受けるためには、ある程度の自己資金割合が必要になります。目安としては、事業すべてを含めて必要な資金の内、2分の1から3分の1は持っておく必要があるでしょう。まずはコツコツと自己資金を貯めることが、金融機関からの信用を築くことになると言えそうです。
「技術・研究開発、サービス開発」に関わる制度の申請書を作成するには、大前提となるポイントがあります。それは日本語としてきちんと読める作文をするということ。もちろんよくポイントとされる「新規性、社会貢献性」を訴えることも重要です。しかしそれ以前に、読んでもらえる申請書でなければ意味がないのです。「文字を丁寧に書き(ワープロでの作成がベスト)、誤字脱字に注意する」「一貫性のある論理的な文章で書く」「専門用語を羅列せず、誰が読んでも理解できるように書く」「申請書の主旨を理解し、その回答となる文章を書く」など、人間が審査しているということを念頭に置いて、わかりやすい文章を書くよう心がけましょう。